深呼吸図書館

悩めるあなたのための1冊アドバイザー“なついちご”が、今のあなたの気分にぴったりの本紹介します。

ユトリロの白

 

ペンキや

ペンキや

  • 作者:梨木 香歩
  • 発売日: 2002/12/01
  • メディア: 単行本
 

だいすきな本を、読み返す。

 

3月に、日本橋高島屋でやっていた、ユトリロ展。行きたいな、と思いながら会期が短く行けずに終わってしまった。京都と横浜はコロナの影響で中止になってしまったようです。残念ですね。

 

ペンキや。という絵本は、静謐で、気高くて、穏やかで。生きること、はたらくことの喜びと誇りに満ちた光を放っている。美しい本だ。言葉では言えないほど、好き。

 

梨木果歩さんの大ファンだし、この本を読んで「出久根育」さんが大好きになった。素晴らしい絵本作家さん。チェコに住んでらっしゃる。一度、銀座の教文館でたまたまやっていた原画展を見たことがある。なんという幸運!!すばらしかった。心の奥底まであたたかくなるような、深みのある、本当にいい絵だった。人間を、世界を愛している人の絵だった。空いていたので、一時間くらい堪能させてもらった。

 

色使いも、質感も、奥行きも、ストーリーが感じられて、なんとなくオシャレで。センスがいい!そしてなんだかわからないけど、静かで穏やかな空気が絵のなかにただよっているんだ。絵のなかに入って、深呼吸したくなるような空気感。そういう絵は、ありそうでなかなかない。

 

ペンキや、の中に出てくるキーワードとなる色が、「ユトリロの白」。いつか見てみたい。と思っていた、憧れの色。

いつか、この人生で見れるだろうか。

見てみたいな。

 

色。

こころの、色。

そらの、色。

ネクタイの、色。

コートの、色。

ベッドのシーツの、色。

壁の、色。

ソファーの、色。

 

色が、人間の気持ちに作用して、世界を豊かにする。そして、色を人の目に届けているのは光。光の反射によってのみ、人の目は色というものを識別する。

 

すべては、太陽から生まれ、太陽に帰るのだろうか。

 

「私が思っていたのと違うけれど

私が思っていたのよりずっといい色です」

 

いつか魂になったときに、体から抜けだして、遠くから自分の人生全体の色を眺めて、そう言えるといいな。

 

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しかもただの白ではありません

ところどころ若々しい緑や 深い闇を思わせる漆黒に近い紫

黄金の夜明けのようなまぶしい黄金色が滲んでいたり……

 

それはすべての色を含んだ白 そうです あのユトリロの白でした