とっくに読み終わっていたこの本の感想行きます。
久々にばなな氏の本気を見たり!
って感じがしました。
下北沢と、彼女の最近の人生にまつわる名エッセイです。
ばななさんのエッセイは昔から大好きだが、一時期日本への嘆きがひどすぎて、
気持ちはわかるんだけどうっすら暗い気持ちになる本が続いていた。
だけど、この本は違う。
ばななさんが両親を看取り、自分の人生をまとめていこうとする意気込み、今生きている場所をよくしていこうとする前向きな感じがとても出ていてよかった。
今の時代の生きづらさ、をこんなに上手に言葉で表現できるのは才能以外のなにものでもない。「ああ、わたしもなんとなくもやもや思ってたことだ!!」と読みながら感じる人は一人二人ではないはず。
例えば
P118
商売は総ちょっぴり詐欺になってしまったこの時代
という表現。まさに!と思った。
P120
昔はよかったという話ではない。今のほうがいいことはたくさんある。ただ、このシステムが長く続くと思ったら大間違いという気はする。人間が人間であるかぎりは、原発問題と同じで人間をなめているほうがいつか破綻するだろう。
前にも少し書いたことだが、「人間が人間を人間として」扱わなければ、いつかなにかが爆発する。
P122
人間が、できれば幸せになりたい、安心したい、誠実な人と快い関係で過ごしたい、その望みが古今東西変わらないかぎり、因果応報は大原則としてそこにある。曲げられない宇宙の法則なのだ。
ばななさんが、これまでの人生を振り返り、これからの人生をどう生きるかの覚悟、がこの本にはしっかりと書かれている。未熟なところがありながらも、成長していこうとする心意気、大変な時代の中で自分とそのまわりの「よきもの」をなんとか残していこうとする努力や姿勢に頭が下がる。そのおこぼれをもらうようにして、なんとか希望をつなごうとする彼女の読者は、全国にまだまだたくさんいるだろう。
P167
あの時よりも財力も人気も体力もないかもしれない。でもそんなことではないということをわたしは痛いほど知っている。財力も人気も体力もあったのに、私はいつも自殺寸前の状態にあったように思う。気づいた今、この残りの時間は神様が私にくれた時間だ。
そう思うと、幸せのあまり陶然となってしまうのである。
気づいてよかった。そしてこれから書くものは全部、私のように人生の姿が見えなかった人に気づきを蓄積するためにかけるといいな、と思う。
P170
インターネットがなんでも教えてくれる時代だからこそ、自分を奮い立たせるような情報は、こうやって自分がひとつひとつ体で運命を操りながら集めていかなくてはいけないのだと、わたしは一瞬にして学んだ。
普通に目に入る情報を見ているだけでは決して手に入らない、こうやって何十年もかっこよく生きて、自分の持っているものを高めている人たちがきっとたくさん、まだ知らないだけでこの世にはいるに違いない。私も気を抜いちゃいけないし、希望を捨てちゃいけない。
私がこの閉鎖的な社会の中で生き難くてひとりぼっちで戦っていると感じているときでも、こういう人たちがもくもくと演奏しているんだ。
ユーモアを忘れず、希望を捨てず、日々のサバイバルな生活を楽しむ方法が詰まった一冊です。なんとなく行き詰ってる人、読んでみませんか。
少し、心に風が入ってくると思うよ。
人間、大きなことはできなくてもいいのかもしれない。
自分が関わるまわりの人と、あたたかく愛をもってつながり、生活を楽しみ、自由な気持ちを奪われないようにしっかり持ち続けられたら、幸せと思えるんじゃないかな。
社会や、時代や、お金や、そんなものに負けない心からの人生に対する覚悟。
わたしもまだ、全然、そんなふうには悟れないな。
でも、希望は捨てずにいきますか。