大好きなよしもとばななさんのエッセイの中で、忘れられない話がある。
ばなな事務所のスタッフの人が、自分の親戚で危篤の人がいて、その親戚に会いに実家に帰ろうか迷っている。でも仕事も忙しいし、この分だと行けるのは亡くなってからになるかもしれない。と話したときに、ばななさんが、絶対に生きている間に会ったほうがいいから、行ってあげなよ!とあと押しして、仕事を休ませてあげた。
という内容だったと思う。
結果、やっぱり行ってよかった!と本人が喜んで話してくれた。という話だ。
だんなの親戚に不幸があって、その方はもう今年に入って春過ぎからずっと入院していた。ここ数年、何度か大きな手術もしていた。そして二日前に亡くなった。難病だった。
会いに行くことになっていた、前日の真夜中のことだった。
彼は、間に合わなかった。
わたしは、男って弱いな。と思った。
だって、行くチャンスはいくらでもあったから。わたしは、片手じゃ足りないほどに何度も、「行かなくていいの??」と言っていた。
たぶん。会ったら泣いちゃうから、弱った姿を見たくないから、わざと行かなかった部分もある。いつどうなってもおかしくなかったし、こういう状況はいくらでも予想できたのだから。
良いとか悪いとか。
正しいとか間違っているとかじゃない。
だけどわたしは、絶対に会いに行く人間だ。
そう、心に決めている。
どんな悲惨な姿でも、相手や家族に拒まれなければ、生きているうちに会う。
その人が自分の中で大切だと思うなら、必ず行こうと思っている。
死んだら終わり。と、わたしは思っていないけど、生きてる間は生きてる間のルールの中で、わたしたちは動いている。
だから、生きてるうちに会いたい。
意識がなかったとしても。
声は必ず届いている。
さよならは、生きているうちに。
ばななさんのエッセイを読んでから、心に決めていること。