本自体は薄いけど人生の重みやきらめきがみっちり詰まったばななさんのエッセイを読み終えた。
ご両親を看取り、親友を見送り、日本という国の片隅で起きている日常を丁寧にすくい上げた日々の気付きがつまった良書。
わたしは、ばななさんの感性がほんとうに好きだなぁ。ばなな作品に出会った頃は10代。
今は30代。そしてばななさんは50代。
お会いしたことはないけれど、彼女の感性が、思考が、そこから紡がれる言葉たちが、いつも人生のどこかに寄り添い傍らで励ましてくれていたように思う。
何を信じ、何を大切にして生きていくか。
誰もがいつか死ぬ。
つらく、くるしいことが、必ずある。
だけど、その中で何を見つめていくのか。
人生の重みに潰されてしまわないためにはどうすればいいのか。
そのヒントがこのエッセイの中には散りばめられているように思う。
この前読んだまったくちがうジャンルの本にも書いてあったけど。
日本人にはやっぱり「ゆるさ」「あいまいさ」がとても大切なんじゃないか。
島国で衝突せずやってくためには、なあなあで流すような「おおらかさ」は必須だったのではないか。
それは、日本という風土で自然に生まれた、みんなが幸せに生きていくためのひとつの大切な資質だったはず。
欧米のように、裁判!エビデンス!とか、声高に叫ぶ文化は、むかしの日本にはなかっただろう。
ばななさんが数々のエッセイの中で嘆かれ、懐かしんでいらっしゃるのは、結局その「おおらかさ」なんだろうと思う。
閉じていく時代。
右肩上がりは決してもうない。
自分の意識を上手に転換していかないと、絶望に飲み込まれてしまうよ。
そんなふうな、個人的な裏読みをしてしまったこのエッセイでした。