深呼吸図書館

悩めるあなたのための1冊アドバイザー“なついちご”が、今のあなたの気分にぴったりの本紹介します。

吉本ばなな「TUGUMI」

 

TUGUMI(つぐみ) (中公文庫)

TUGUMI(つぐみ) (中公文庫)

 

 もう人生で何回読んだかわからない本。

この前ひさしぶりに読み返した。

よい。

言葉や理屈がいらないよさ。

 

わたしの中では、evergreenという言葉が本当にぴったりくる。

 

もう二度と戻ることのない懐かしい日々。

決して戻れないけど、そんなにいいとも思ってなかったけど、思い返すと宝物のように輝く日々が確かにあって、この本はタイムマシーンのように、その日々に連れて行ってくれる。せつなくて、幼くて、だけどかけがえのない日常の、ある海辺の夏の物語。

子供でいられた最後の夏の風景。

 

ばななさんの本の中で、海が出てくる物語は特に秀逸な気がする。

あの独特の気配、空気感。切ないような、自由なような、なんともいえない気持ち。

 

ページをめくる度、その微妙な夕暮れの光が、風が、波の音が、すべて五感として立ち上るようだ。うまい!

 

そして、つぐみが最高だ。

美人で病弱で、乱暴で意地悪!

生きてるー!って感じがする。

命が爆発してる感じ。

 

大好きな本です。

夏を感じさせてくれる、潮風の匂いのする一冊。