深呼吸図書館

悩めるあなたのための1冊アドバイザー“なついちご”が、今のあなたの気分にぴったりの本紹介します。

ドリアン助川 「おわりに」

f:id:natsuberry:20170225110644j:plain

    

 

    「おわりに」   

         ドリアン助川叫ぶ詩人の会

 今日がダメだった人は


 明日に向けて頑張れなんて


 僕は絶対に言わない


 今日がダメだった人は


 明日もきっとダメだろう


 でも明後日はほんの少しだけよくなって
 

 その次の日はもう少しだけよくなって

 

 さらに次の日も少しだけよくなって
 

 いつか気づくと
 

 今日がダメだったことなんて忘れている



 

 焦るなよと僕が言うのは
 

 実にそういうことなのだ

 

 スイカが大きくなる瞬間なんて誰にも


 ほんと誰にも見えないのだから

 



 涙がとまらない人に


 いつかはいいことがあるさなんて


 僕は絶対に言わない


 涙がとまらない人は


 本当に涙がとまらないのだ

 


 
 でも君の涙はとてもきれいだね


 心の中からいっぱいわいて出てきて


 優しい人だからつらいんだねと


 僕も泣きそうになりながら


 言ってあげよう

 



 とても変な話だけど


 涙が出ないような人間になってしまったら


 もうその人は枯れてしまった


 生きてる木の 大きな木の


 枝や葉や たくさん流れているよ 涙は



 世界で一番長いコンブは 

 
 世界で一番長いことを知らないで


 ゆらゆらと揺れている


 世界で一番大きなクジラは


 世界で一番大きいことを知らないで


 海の波間で泳いでいる

 世界で一番白い鳥は


 世界で一番白いことを知らないで


 雲にむかって飛んでいる


 世界で一番優しい人が


 世界で一番優しいことを知らないで


 恋人にふられて泣いている



 ほら 君のことだ


 誰もが世界で一番なのに


 誰もがそれを知らないで


 生きていく 生きていく 生きていく

 

 

 

高校の時、友達の一人に教わった詩の一節が、ふと頭の中に降ってきた。

初めて読んだとき、とてもとても感動して、泣いた。

そして、ルーズリーフに手書きで写して机の引き出しに入れ、繰り返し繰り返し、心がしんどくなる度読んだ。タイトルも作者も知らなくて、大人になってから調べて知った。

 

最初の3行でもうすでに、ノックアウト。

最後の一行で、じーんと余韻を味わう。

呪文のように、暗示のように

「生きていく 生きていく 生きていく」が心の深くにこだまする。