大好きで尊敬する梨木果歩さん。
2冊読んだけど、どっちもとても素晴らしかった。
こんなに中味の濃い上等な物語を語れる人は、なかなかいないと思う。
なかなか読む時間がとれなくて、読まないまま図書館に返してしまおうかと思ったけど、読んで正解。すごくよかった。
でも、そのよかった、の中味を語れる語彙力がないのが悲しい。
時代は昭和のはじめ。
主人公は、若き人文地理学の研究者。
フィールドワークのため南九州の遅島(架空の島)へと旅立つ。
かつて修験道の霊山でもあったその山で、大学の夏季休暇を利用して現地調査をすることが彼の目的である。
しかし、彼は都会からずっと離れた、打ち捨てられたような孤島にどうしようもなく惹かれてしまう、ある個人的な心の闇を抱えていた。
なにがすごいかって、梨木さんのもう専門家と言っていいほどの植物や動物、山や家々の描写がすごい。詳しすぎる。巻末の参考文献を見てもわかるとおり、この方本当に詳しく勉強されています。失われゆくものへの愛情と惜別と虚無を、これほど巧みに表現できる力量は圧巻。
わたしも昔少し勉強したが、読んでいて胸が痛かった。
明治政府って。明治維新って、なんだったのだろうか。
そこが、日本という国のかなり大きな分かれ目だったのだと強く感じる。
徹底的に破壊された民間信仰、その象徴である「モノミミさん」というシャーマンの存在。アニミズムを、これでもかというほどに破壊しつくして、現代文明がある。
もののけ姫じゃないけど、人間は確かに、「山の神」を殺してここまできた。
だけど、生きていくしかないのだ。生きている以上。
そんなふうに、物語はするりとまとまっていく。
ぜひ、読んでほしい本です。
こっちは一か月以上前に読んだ本。
とにかく装丁の美しさに惚れ惚れする。
なんて美しく奥ゆかしい装丁なんだ。
品が良いとは、このこと。
梨木果歩、作品集。ということで、短編から中編が収められている。
自分がだれで、いまどこにいるかを本気で見失ってしまいそうなほど、するりと異世界に迷い込ませてくれる手法は見事。これぞ、梨木果歩の真骨頂とも言える。
わたしは、表題作であるに丹生都比売がやはり印象深かった。
主人公である草壁皇子は、うののさららの皇女(のちの持統天皇)を母に持ち、父は大海人皇子(のちの天武天皇)。壬申の乱を草壁皇子の視点から描いた物語とも言える。申し分のない血筋の生まれでありながら、病弱で自信のない少年は、都を追われ、吉野の地で「丹生都比売」という、水銀と清らかな水を統べるご神霊の力を借りて蘇りの力を得ようとする両親とともに不安な日々を過ごす。
丹生都比売さまがなかなか父である大海人皇子の元に現れず焦りが募る一行だが、その間に草壁皇子は「キサ」という口のきけない不思議な女の子と次第に仲良くなっていく。果たして「キサ」の正体は?大海人皇子一行は丹生都比売さまのお力を得て本当に都へ帰れるのだろうか??というのがこの物語の主な内容です。
幼い少年少女が主人公の古代のお話がわたしは大好物なので、鼻血吹きそうに興奮しながらいっきに読んでしまった。
結論、おもしろい。
文章や話の流れがとても美しくてうっとりする。
そんでもって、うののさららの皇女が怖すぎて慄く。
草壁君のひ弱さがきゅんきゅんきて、とてもよい◎
うまく感想言えないです。
この本のよさの100万分の1も伝えられない。
文章うまくなりたぁ~い!
読んでください!梨木果歩好きは必見の2冊でした。