なんとか行ってこられてホッとしている。
「星野道夫」さんの没後20年特別展。
とてもとてもよかった。
展示の仕方もすごくよくて、見ごたえがあった。
一番見たかった写真も大きなパネルで見ることができた。
“ クジラの骨の遺跡とベーリング海に浮かぶ半月 ”
男に生まれ変われるとしたら、迷うことなく星野道夫、と答える。
彼は43歳という若さで亡くなっているけれど、ふつうの人が一生かかっても見ることのできない美しい景色を見尽くしてしまったのだろうか。
わたしは彼の写真も好きだけど、それより文章の方を熱愛しているので、今回ちゃんとした展示会に行くのは初めてだった。
平日だろうと関係なく、かなりの人が足を運んでいる。
特にお年を召した方がとても目立った。
そして、こういった展示会では珍しいことに、男性が多い。
それもおじいちゃんに近い年齢の人。もちろんスーツ姿のサラリーマンや美大生っぽい出で立ちの若者までさまざま。
みんな真剣に、それぞれに熱い想いを抱えながら一枚一枚写真に向かい合う様子が印象深かった。
動物たちの生き生きした様子ももちろんすごくいいんだけど、やはり大きいパネルで見て一番強く感じるのは、その動物たちを映した背景に広がる自然のスケールの大きさだ。ああ。ここに立ってみたい。パノラマの風景の中にいるとしたらどんな気分だろう。と想像するだけで、心の中に風が入ってくる気がする。
あと、彼のとる人物の写真がとても好き。
みんなの自然な笑顔。星野さんがシャッターを切らなければ決して誰も残すことのなったインディアンの古老たちのどっしりとした生の記録。
どの人も本当にいい表情で写っている。
それが、彼の人間力のすごさ。
そして、アラスカに住むインディアンたちの顔は、わたしたち日本人とそっくり。
星野道夫は日本人であったからこそ、彼らの中にあそこまで深く入り込み、心を通じさせることができたのだな、としみじみ感じた。
モンゴロイドの血。
これだけ遠く離れていても、どこかでつながっている不思議さ。
想像力は、人間だけがすべての生物の中で与えられた能力だという。
その想像力をもっと使ってごらん、と道夫は言う。
ちっぽけなわたしたちが雑多な日常を過ごしているのと同じとき、同じ地球上でクジラが思いっきりジャンプしていると「想像する」。
それだけで心が豊かになるでしょ?って語りかけてくれる。
どの本だか忘れたけど、星野道夫の本のあとがきで池澤夏樹が、彼はクマの事故によって突然亡くなり、残された者たちはみんなそのことを嘆き悲しむけれども、彼の愛した神話の世界ではそのように亡くなる意味があったのだ。ど述べている。わたしたちには永遠に計り知ることのできない何か崇高な意味が・・・。
死ぬまでにアラスカに行きたい。
パノラマの大自然の中に立ちたい。
お風呂がないのはつらいけど(笑)
展示の最後に飾られた本人の写真とメッセージが素晴らしくて、胸を打たれて泣きたくなった。
*** 短い一生で
心魅かれることに
多くは出合わない
もし 見つけたら
大切に・・・大切に・・・ ***
Michio Hoshino