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深呼吸図書館

悩めるあなたのための1冊アドバイザー“なついちご”が、今のあなたの気分にぴったりの本紹介します。

湯本香樹実「夏の庭」

さて、夏もそろそろ後半戦ですね。

今年はこの湿気が本当につらいです。

じっとり。むっしり。湿気がひどくて蒸し暑いと、なぜか胃の調子がよくなくて。

なんでだろ。

 

うちは結構切り詰めて生活しているボンビー家庭なので、大好きな果物をたま~にしか買わないようにしてがんばっていたのですが、ここ何日かでタガが外れたように買ってしまった。

 

梨、高いけど安くなってから買おうとか思っていると、「幸水」の時期はあっという間に終わってしまっていつの間にやら「豊水」の品揃えになってしまう。

豊水もおいしいけどあのしょっぱい感じが独特なので、やっぱり幸水のが好き。

なので、袋で売ってる5個入りとばら売り大きめの1個を買い、ぶどう食いて~!と思ってがまんしてたぶどうを買い、よく考えたら今年一回も自分で買っては食べていないスイカをまるごと一玉買ってしまった!!

 

お盆に母の実家に行ったときに、おばさんが畑で育てているスイカを持たせてくれて、めっちゃ重いのに持って帰ってきた。でもそのかいあって甘くておいしかった~!

だから、季節が終わる前にもう一回悔いのないようスイカ食べておかなきゃと思ったのです。

 

前置きがやたらと長くなってしまいましたが、今日はこの一冊です。

夏になると必ず文庫本コーナーに平積みされる、読書感想文の定番と言えば・・・

 

夏の庭―The Friends (新潮文庫)

夏の庭―The Friends (新潮文庫)

 

 わたしの人生で好きな本ベスト10には必ず入ると思う。

たぶん軽く10回は読み返してる。

今日流しでぶどうを洗っているときにふと、この本の中に出てくる印象的なワンシーンを思い出して、思い出したタイミングで書いておこうと思った。

 

主人公は小学6年生のぼく。と、その友達河辺と山下。

のっぽのぼく、メガネの河辺、おでぶの山下。

大人気シリーズの「ずっこけ三人組」を彷彿とさせる安定感のある設定。

ある日、山下がおばあさんのお葬式に行って初めて「死んだ人」を見た話を親友二人にするところから話は始まります。

 

ちんちくりんでキレやすい河辺が「自分も死んだ人を見てみたい!だから近所に住む死にそうなおじいさんを見張ってその死ぬ瞬間を見てやろうぜ!」と言い出して物語は動き出す。

 

おじいさんはほとんど家から出てこないし、ごみも庭に置きっぱなしでちゃんと出さない。もちろん人付き合いも一切しない。

でも、見張られてるうちにだんだん元気になっちゃって、ちゃんと「人間らしい」生活をし始めます。その過程がむちゃくちゃいいんだ。

あんまりにもひどい生活なのでみかねたぼくが「ゴミ出ししてあげようと」したり、魚屋の山下が家からくすねてきたお刺身を、コンビニ弁当ばかりのおじいさんに「たまにはいいもの食べてほしくて」と言って持ってきてドアをノックしてお刺身を置いてサッと隠れたり。

 

なんだかまぬけでお人好しでかわいいの。

おじいさんもそんな3人と徐々に自然に交流するようになる。

尾行されてるのをわかってるおじいさんが3人を撒いてしれっと家に帰ったり。

いたずらっ子なおじいさんにまんまといっぱい食わされてぷんぷんしてる3人がなんともほほえましくて、くすっと笑ってしまうのです。

 

わたしが一番好きなのは、おじいさんがすっかり心を開いて3人に「秋になったら、何か種を蒔こう」と言って、3人が少ないおこずかいを出し合って種屋さんに種を買いに行ってみんなで庭で種まきするシーン。

 

それと、ふだんはそんなにしゃべらないおじいさんが、種屋のおばあさんと縁側で故郷・北海道の思い出話に花を咲かせるシーン。

 

まだあった!!

おじいさんが突然3人を電車をのって出かける河原まで連れて行って、自分で作った花火を見せてあげるシーン。

 

そして、その全部のシーンが読んでる間泣きそうに切ないのは、おじいさんが最後に死んでしまう結末をわたしが知っているから。

 

サッカーの合宿から帰って、ワクワクしながらおじいさんに会うのを楽しみに家に向かった3人は、一番最初の目的通り「死んでいるおじいさん」を見ることができたのでした。

そのおじいさんの亡くなった部屋に漂っていた甘い香りが、おじいさんが寝る前に3人と食べようと思って洗って鉢に盛っておいた4房のぶどうの匂い。

わたしは、ぶどうを夜洗っていて、このシーンを思い出して泣きそうになってしまったのでした。

山下がそのぶどうを見て言うセリフが泣かせるんだ。

「遠足に行く前のガキみたいだね」

 

この本の全部が好き。

何より「夏!!」って感じさせてくれる描写が好き。

おじいさんの人生の最後に3人が現れてくれたことにおじいさんはどれだけ救われたんだろう、ということに思いを馳せたり・・・。

あくまで彼らが対等な関係であるところもとてもいい。

意地を張り合ったり、ちょとしたことにお互い感心しあったり。

関係の中に無理がない。

きっかけはなんだっていいんだよね。

「おじいさんの監視」って!!

小学生の男子ならではのあほな発想(笑)

でもそこから生まれてくる交流がこんなにも深くてあたたかな人生経験を培ってくれるという過程を、作者の湯本香樹実さんは緻密に愛情深く表現されています。

 

もし読んだことのない人がいたらぜひ。

おすすめです。夏の間に読もうね。