精霊の守り人展に行ってきた。
行きたいな~、と思いながらなかなか日にちがとれず、行けずに終わっちゃいそう。と思っていたが今日がぽっかり一日空いてることに気づいてぎりぎりセーフで行ってこられた。
もう終わりの方だし平日だし、場所もけっこう辺鄙だし、すんごい空いてるだろうと思ったが、とんでもない。
けっこうな人でにぎわっていて、しかもその半数以上が50~60代を超えるような年配の方たちだった。
老若男女に愛されていることを改めて実感。
著者である上橋菜穂子さんの私物や写真がかなり展示されていて、思ったより見ごたえがあった。前半はただ、大きなパネルに本文から抜き出した文章や地図が書かれていたりする展示が多く、ちょっと拍子抜けだったけど、奥へと足を進めるにつれて、上橋さんという人間を作り上げた経緯や環境など、人物に踏み込んだ展示が多くなって非常に興味深かった。嬉しかったのは、二木真希子さんや佐竹美保さんの原画が飾られていたこと。
それと、上橋さん自身が描かれたバルサとタンダ、そしてチャグムのラフ画まで。
チャグムの絵に至っては、素人とは思えないほどうまかった。まっすぐな大きな強い目が、心の中まで見透かすようにこちらを見ていて目が離せなかった。
上橋さんの中のチャグムはこういう少年なのだな、と知れたことがうれしくて泣きそうになった。
初原稿に添えられた手紙も公開されていて、著者の謙虚で情熱的な人柄がひしひしと伝わってくる文章だった。文化人類学者、としての視点を余すところなく発揮されたからこそできた物語なのだな、と強く感じた。
展示室の中には4か所くらいにテレビが設置されていて、この展示会のために撮られたという上橋さんのインタビューが見られる。
全部のインタビューを聞いて、室内を目を皿のようにしてくまなく見たら、2時間半くらいみっちり過ごしてしまって驚いた。
わたし、上橋さんのお人柄が好き。
上橋さんの描く世界が好き。
バルサが好き。
そしてそれは、文化や生活様式や食べ物などの緻密な描写とともに、「わたし背景が気になって、それがちゃんとしてないと書けないんです」とご本人がおしゃっておられた背景がしっかり描かれていることに「リアリティ」を感じるからこそ、こんなに大勢の人がのめりこんでしまうのだと思う。
インタビューで、「ファンタジーだからなんでもありはいやだ!!わたしはそういうのだめなんです」ときっぱりおしゃっておられるのに惚れてしまう。
他者を尊重することは、我を知ること。だとも述べられていた。
彼女の作品が世界中で翻訳され、支持されていることは、大げさなようだけど、人類の平和や共存を考えるうえでとても大きな役割を果たしているんじゃないか、と思った。
様々な視点からものごとを見る視野の広さ。
違いを知りながら、汚い部分もありながら、もっともよい未来を作るために何ができるかを模索し続けるバルサやチャグム。
それはすべて、現代を生きるわたしたちにも通じていて、だからこそ、何度でも読み、何度でものめり込み、そのたび感動してしまう。
何よりわたしが引き込まれた理由はきっと、社会から虐げられ外れた場所で生きざるを得なかった者たちが主人公である、ということにある。
だってわたしも、この世界の王道を歩けず、脱落してしまった人間だから。
王様も外れ者も、みんなが主役の物語って、あるようでなかなかない。
汚い部分、ままならない部分をこれだけさらしてくれているファンタジーはまれだ。
そして息をのむ戦闘シーン。
語るときりがないですね。
もう好きすぎてだめだ(笑)
この展示会、見れてよかった。
わたしはやっぱり、児童文学が、そしてそこに描かれる絵が、そして旅が、本当に大好きだと再確認できた。胸が締め付けられるくらいに好きで、だけど、最近そのことを思い出す心の余裕が全然なかった。
生活に追われ、仕事のこと、結婚のことで悩み、梅雨にノックダウンされてうつうつとした日々を過ごしてしまっていた。
もっと、魂が喜ぶことしなくちゃ。そう思った。
魂が楽しいと思い、栄養をつけられる時間を意識的にとらなくちゃだめだね。
お金がないから、とか言い訳しないで、やりたいこと、できる範囲でどんどんやろう。
そうしないとすり減っていく一方だ。
好きなものを好きだって言わなくちゃ。
やらなきゃいけないこと、未来への不安で押しつぶされてる日々の自分に。
わたし、昔のヨーロッパの児童文学の挿絵がすごく好きだった。
ムーミンもそうだけど、黒いペン1本で描かれた世界の多様さに胸が高鳴って仕方ない。自分は描けないけど、見るのが好き。ワクワクどきどきする。
そんなことを思い出させてくれた今日の「精霊の守り人展」、けっこう遠かったのに「えいっ!」と行動した自分の行動力をほめてあげよう。いい1日でした。
- 作者: 上橋菜穂子,二木真希子
- 出版社/メーカー: 偕成社
- 発売日: 2006/10/31
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