読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

深呼吸図書館

悩めるあなたのための1冊アドバイザー“なついちご”が、今のあなたの気分にぴったりの本紹介します。

佐藤多佳子「第二音楽室」

春ですねー。

 

今日ご紹介するのはこちら。

 

第二音楽室 (文春文庫)

第二音楽室 (文春文庫)

 

 大好きな一冊。

卒業、入学シーズンにぴったりの本です。

 

胸がきゅんきゅんするぅ。

ど真ん中で大好物な内容なのですよ、わたし。

 

4本の中編から構成されるこの物語。

タイトルからおわかりのように、主題はすべて「音楽」

 

1本目。

鼓笛隊で “ 特別な楽器 ” からあぶれちゃって、代り映えのしないピアニカ担当になっちゃった、ちょっといじけ気味の6人の小学生が主人公のお話。

何十年前だかわからないほど遠のいていく自分の小学生時代が、まるで昨日のことのように思い出されてとにかく懐かしい。

 

ピアニカ、リコーダー以外の楽器を触れた時のあのワクワク感と、誇らしさって、なんなんだろうね。「トクベツ」な感じ。

わたしのときはスピッツの「空も飛べるはず」とか演奏したなぁ。

 

あぶれちゃった、ばらばらの6人が、自分たちなりの方法で少しずつ仲良くなり、

最後鼓笛隊の移杖式で、堂々と立派に演奏するシーンがすごくいい。

 

2本目。

一番短いお話なんだけど、終始顔がにやけっぱなし。

中学生の男女が、音楽の授業でデュエットするために相手を探す。

という内容なんだけど、もうなんだか甘酸っぱくて体がかゆくなりそうです。

そして、ニヤニヤ・・・。

よくまとまっていて、終わり方もとても気持ちがよくて、素敵なお話。

 

3本目。

佐藤多佳子さんの何がすごいって、なんで大人なのに、中学生のときとかの本当に些細な心の機微がわかるかつ、こんなにうまく表現できるんだろう。

天才すぎる。

大好きすぎる。

 

気が合わなそうな女の子と、仲良くなっちゃう瞬間。とか、

気になる男の子にどんどん恋してく過程とか。

もう最高。

 

4本のリコーダー。

ソプラノ、アルト、テナー、バス、に選ばれた4人の中学生が、卒業式に向けて

練習し、見事素晴らしい演奏を披露。

って、あらすじだけ書くと何てことないんだけど、かわいいのよ中学生。

純粋だよ、本当に。ちょっとしたことで笑って悩んで泣いて。

 

佐藤さんは、その場の空気感とか、臨場感とかの表現が抜群にうまい。

文章が簡潔。無駄な回りくどい小説っぽい表現が一切なくて、気持ちがいい。  

わたしは、ちょっと内気で自信のない主人公の女の子がふっきれる瞬間が好き。

 

p135,136

うまく吹こうという力みがとれた時、長く伸ばしたゆったりした音の中に静かな感情がみなぎった。最初のミの音がかつてなく透明に響いた。吹きながら、自分自身が自分の出した音の中に吸われていくような不思議な集中。続く4度高いラの音がすっきりと出た。

 

美しい文だなぁ。

学生時代って、思い出すと切ないね。

本気で好きな人っていなかったけど、いたら楽しかったんだろうな。

あの頃は、「自分は本気で人を好きになったりできない人間なんじゃなかろうか」と悩んだりした(笑)青かった!

 

そして4本目。

一番長いお話。

一言でいうと、「痛い」

 

いじめられて、心が壊れちゃった女の子が主人公。

誰のことも信じられなくて、人が怖くて、屈折した縮こまった心に、

一筋の救いの光のように差し込んできたインディーズの女性シンガー「らじゅ」の歌う曲。

 

彼女は「らじゅ」の歌だけを手掛かりに、もう一度怖くてたまらない「現実の世界」に踏み出していく。

終始びくびくして、自分を価値のない人間だと思い込む主人公が痛々しい。

だからこそ、リアルだ。

全国に、彼女と同じ思いをしてる少女はすごい数いるだろう。

 

弱ってる時だけに、妙に心に入りこんでくる曲って、確かにあるよね。

わたしにもある。

その歌手の、その曲だけに寄りかかって、暗闇の中でもがいていた時期が。

元気になってから聞いてもなんてことないの。

でもそのときは、麻薬みたいにないと生きられないような切迫した気持ちで聞いていた。

 

佐藤さんは、全体的に暗いトーンで進んでいくこのお話を、きちんとした希望で終わらせてる。そうあるべきだ、と思うのだ。

特に子供が読むような本は。

子供みたいな大人が読む本もね。

 

久々にちゃんと本の感想を書いた。

相変わらずゆーらゆらした精神状態なので、「こんなブログ閉じてしまえ!」と思う日もある。ゆるゆる続ければいいんだろうけどね。

 

まあきっと、全ては春のせいってことにしようか。